高卒の俺が・・・

高卒の俺が何とか色々もがいて生きたそんな証を此処に記す

「底辺の味」 第一話

僕はどこかで道を踏み外したのだろうか。

 

でもきっと思える筈だ。

 

こういうルートで味わうものも人生なのだと。

そう思えた時に人生を心底味わえたのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

部活もそこそこに頑張ってきた。

全国大会等と言う大層なものこそ出たことは無かったが、それでも自分には色々な才能が眠っているとそんな幻想を抱えながら気がつけば僕は学生生活に幕を閉じていた。

 

そう、学歴は高卒で止まっている。

 

大学への進学をやめた理由はなんだろうか。特にやりたい事も無い自分が親のスネを齧る事に抵抗を感じた。そんな強がりが後に自分の人生を酷く苦しめる等考えもつかない。

 

その時の僕の想いはただただ親元を離れてこの身一つで生活すること。

そしてそこまで裕福でない実家に仕送りをする事がささやかな夢だった筈だ。

 

 

 

「あぁ、もう休憩終わりかよー」

「短ぇよなぁ!大体あそこから休憩に移動するだけで5分は損してんのに休憩30分だもんな」

「俺は飯いらないから、そのまま働いて時給欲しい」

 

 

だが気づけばもう既に20代も後半に近付き、周りには30から50を越えたオッサン達が日雇いで日々を食い繋いでいる状況。

 

そんな中の1人になっていながらも僕はまだ周りとは違う、まだ若い、先があると密かに思いながら日々をただ生きていた。

 

 

「ああ、俺も普通に税金払って生きてみてーよ。なぁ?」

「え?ああ、そうですね。僕もちゃんとそういうの払えるようになりたいですね」

 

 

 

日雇いに税金は無い。

ましてや確定申告等わざわざ申し出るような人間もいないし、そもそもそんな知識もない。

僕もほとんどそんな知識は無かった。

 

最初こそ新卒で入った会社では税金も引かれていただろうが、一年で辞めてしまった僕には若さゆえかそんな知識がある訳もないのだ。

 

 

なんとなしにこんな仕事をしてていいのかと思い捨ててしまった新卒切符。社員という肩書き。

 

バイトで食いつなぎ、派遣で働き、気づけば日雇い労働者。

もう既にそんな日雇い生活を続けてどれくらいになるだろうか。

 

毎朝自腹の交通費で駅まで行き、そこからバス代を節約する為1時間半歩いて現場の工場まで歩く。

 

朝6時の冬は寒い。

手がかじかみ、耳が痛い。

通り過ぎるスーツ姿のサラリーマンが心の底で羨ましく、いつか自分もそんな生活を手に入れたい。

 

社員という価値を知らずに捨ててから数年、結局今になって思うのはそんな願いだった。

 

 

結局親への仕送りも新卒の時の初給料を8万程送ったきりだ。

それも結局不憫だと返されてしまったのだから結果なんの親孝行も出来ていない。

 

 

そんな自分に毎日嫌気が差していた。

楽しいと思う時もある。

だが心に燻るやるせなさはいつになっても消える事はなかった。

 

 

 

 

 

 

「ああ、お姉さんお姉さん!!今帰りですか?いいお店がありましてね」

「………」

「っ、出たよイヤホン」

 

「イヤホンの時は前に出ていってこうやるんだよ!よっ!お姉さん、ちょっと聞いて、ね!ね!っち、くそブスが!なんも聞いてねぇだろ、くそ」

「全然ダメじゃないすか