高卒の俺が・・・

高卒の俺が何とか色々もがいて生きたそんな証を此処に記す

「底辺の味」第二話

 

夕闇が酷く気を重くする。

同じく日雇いだが、別現場で働く彼女の帰りも待たぬまま僕は次の仕事の為にまた駅へと向かう。

 

今日は夜勤が無いのでもう1つのアルバイトだ。

正直時給も定かじゃない。

一発逆転を狙った好奇心とでも言うか、僕はホストクラブにも所属した。

 

田舎の駅前にある小さな店だが、そんなんでも応募するには随分勇気を振り絞ったものだ。

彼女にも大反対されたが、生きるためにはなんだってやらなきゃと思ったのか。それともただ他の女の子と楽しくやれると思ったのか。

 

本当の理由は自分にも分からない。

だけどいつしかそれは僕と彼女の距離を表すものになっていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 


「ああ、お姉さんお姉さん!!今帰りですか?いいお店があるんですよ」

「………」

「っ、出たよイヤホン」

 

「イヤホンの時は前に出ていってこうやるんだよ!よっ!お姉さん、ちょっと聞いて、ね!ね!っち、くそブスが!なんも聞いてねぇだろ、くそ」

「全然ダメじゃないすか」

「あぁ、いいんだよ次」

 

 

夜もすっかり更け、僕は数個上の先輩と駅前でお客さんになりそうな女の子をひたすらナンパしていた。

所謂キャッチと言うやつだ。

 

だがこの時間の女の人は会社帰りの真面目なOLか、男慣れした出勤前の夜の蝶。なんにせよただのキャッチに捕まるような奇特な女子などそうそういないだろうが。

 

 

「待ち合わせですか?」

「え、ああ、うん。まあ」

 

そんな最中、先輩から離れて1人キャッチに向かった僕は喫煙所で一人佇む女性に声をかけていた。

 

 

「もしかしてホスト君?」

「そうですー。良かったらどうです?」

「んー、どうしょうっかな」

 

 

こっちはスーツに茶髪、この時間にナンパと来ればキャッチしかないだろう。

それをすぐさま判断して悩んでくれるあたり話が早いかもしれない。

これは行ける、そんな緊張感と高揚感が心臓の鼓動を高鳴らせる。

 

「んー、やっぱりいいやぁ。また今度ね!」

「あ!じゃあアドレス教えとくんでメール下さいよ」

「あ、うん!」

 

 

僕は焦りながらも携帯を出してそのアドレスを教えた。

 

 

暫くしてキャッチから戻れと店から連絡を受け取った先輩と店へ戻る。

僕は遂に自分にも指名客が来るかもしれないとそんなワクワク感に浸りながらいつ来るかわからないメールを待ちながら今日もヘルプでまずい水割りを飲み続ける。

 

 

 

一体時給換算したらいくらになるだろう。

最低賃金の5000円を前借りで自分より若い店長から受け取る。

 

外は既に朝だ。

 

少しの優越感と満足感を抱きながら家までの電車に乗り込む。

この優越感はきっと皆が仕事に行く中帰れると言うそんな小さなものだ。

そして自分はホストなのだと言う子供のような誇り。

 

せめて売れてから言えとも思うが、その時はそれがただ満足だったのかもしれない。